確かそういう名前だった。
踊りだ。
社交ダンスのようなものを教えられた。
みんな、特に男子は馬鹿にしていたが、実はみんな愉しみにしていたものだ。
ダンス自体は面白いとは思わなかった。
ただ、他人と触れ合うというのが面白かった。結局はそれは女子との触れ合いだった。
そしてそれは授業だから渋々やらされるような言い訳が立った。
交代になるので、気に入った女の子が回ってくると嬉しくてしょうがなかったものだ。
女子はダンスとして楽しんでいたようだったが、ほとんどの男子は女子と触れ合えることに密かな愉しみを見出していたはずだ。
好きな子、気になる子、それがダンスという授業の一貫で触れ合うことができた。
女子というのはアヤトリとか、縄跳びとか、そういうお仕着せを嫌わない。
教えられた振り付けを覚えることを楽しむ。
男子はそういうことに関心がない。
それでも男子がジェンカみたいなのを喜んでいたのは、女子との関係というのが大きかった。
ほとんどの女子はそれに気が付いた人はいなかったと思う。
あるいは本当は気が付いていて、知らん顔をしていただけかも知れない。
女の子は子供の頃は特に男子よりも早熟だ。
テレビの「赤い」シリーズなんて、男子には皆目面白さが分からなかったが、ほとんどの女子はそれを見ていた。
男子ときたら怪獣モノ、ヒーローものだったのだから、その子供っぽさはわかるだろう。
「ラブレターを送る」ということにしても、まず女子が始めたことだ。
男子にはそういうことはさっぱりだったはずだ。
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