得意中の得意だった。
子供の頃から鼻の調子が悪かった。
母親の腹がきっと悪かったんだろうが、今更言ってもそれは始まらない。
蓄膿症というわけではないし鼻声というわけでもない。
花粉症はまだ発病していなかったが、いつも鼻の穴がむずむずした。
その上、都会の汚れた空気でいつも真っ黒の鼻くそが出た。
乾いていてよく取れた。
見事なほどのでかいのがよく取れた。
歳をとった今ではまるでそんなことがないから、考えてみれば不思議なものだ。
その頃の子供たちはみんなそんな風に鼻クソをほじくっていた。
やめろと言われても止められない。
詰まっているものを掃除している感覚だった。
女子はやる子はいなかったが、男子はみんな熱中した。
何かまだ人間としてできていない部分があったと感じるものがあった。
生まれてきたオリのようなものがまだ残っている感じだった。
それは乳歯のように我々子供たち、特に男の子に未完成な自分を自覚させるものがあった。
だからキレイに掃除すると少しよくなった気がしたものだ。
こういうのと鼻タレ小僧というのとはまるで違うものだ。
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