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肉屋の友達

クラスメイトに家が肉屋をやっている友達がいました。

 お定まりのようになぜか太っていて、ちょっとイジメたりもしていました。
 泣きもしないので休み時間なんかよく体当たりなんかしていた。


 ある日のこと、彼の家を見に行くという話になって何人かで帰り道に寄り道をしました。


 ごく普通の小さな肉屋さんでした。



 二間ぐらいの間口に冷蔵庫のショーケースがあって、肉が並べてあり、片側にはコロッケとかトンカツみたいなものを揚げて並べてあります。

 ごく普通の肉屋さんでした。

 少し高い位置で商品とお金を受け渡します。
 肉屋さんはお遣いには困るお店です。

 肉屋さんは子供だと受け渡しに困難するような高さがカウンターになっているのが普通です。

 そしてカウンターの向こう側で人が揚げ物をしたりしています。

 カウンターには秤があって肉を計ります。
 ソース、揚げ物用の粉、ラードなんかが販売用にズラリと並べてありました。




 よく街で見かける肉屋そのものだったので何だか感心しました。
 そんなリアルな肉屋さんが自分の家だなんて。


 家の人、父親だろう人が私たちを見つけてにこやかに声をかけてきました。

 「友達連れてきたのかい、珍しいねえ」なんて。

 肉屋のデブの友人はちょっと誇らしげにしているように見えました。


 父親はニコニコとして「これ食べな」と言って、コロッケを私たちにくれた。
 日ごろはイジメているものだから、私たちはなんだかバツの悪い気がしました。



 家が客商売をやっている家に行ったのはこれが最初で最後でした。


 普通は商売をやっている人はあまり近所とは付き合いません。
 隣との近所付き合いと言ってもそこはお客なのです。

 だから親たちは商店会なんかで付き合いをしています。

 
 家が商売をしている子供もあまり友人を家には呼びません。

 人を相手に商売をしていることが恥ずかしいと思う気持ちもあったようです。


「毎度あり」なんて、今だったら素敵に聞こえるのですが。

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幼稚園と保育園


 小学生ともなると保育園や幼稚園などは格下に感じます。

 だから保育園などでバザーなんかのイベントがあったりすると、子供のくせに偉そうな感じで出かけていきました。

 その点、幼稚園というのは小学生にとっては「違う学校」のようなもので、あまり開かれてはいなかった覚えがあります。


 幼稚園は躾けられたり、行儀よくさせられる。歌を覚えさせられたりする。叱られたりする。

 保育園は甘えさせてくれたり、寝かしつけてくれたりオヤツが出たりする。キレイな若い保育士がいます。
 
 幼稚園のセンセイはお婆さんが多い。


 保育園と幼稚園は運営のカテゴリーが違うものです。

 今はこの区別について雰囲気は変わったかもしれませんが、昔はなんとなく区別がありました。


 幼稚園の管轄は文科省、保育園は厚労省です。

 幼稚園はその後の小学校へ進む準備とされていて、幼稚園ではカリキュラムとか学習に近いことがされていました。

 少し学習塾のような感じ。


 保育園というのは子供を預ける施設。親が働いている子供というイメージです。

 保育園はベビーシッターです。




 小学校に上がると、義務教育ですからみなが同じスタートラインに立つわけですが、「私は保育園だったから」なんて、女子がちょっと申し訳なさそうに言い訳するような子がいたりして、不思議な感じがしました。

 みんなどちらかしか通っていないのですから、自分の知らない世界を想像することは子供には難しかった。


 しかし親なんかを通じて、保育園と幼稚園に違いがあることは一部では認識されていたのかも知れません。


 男子でも保育園に預けられていた子供もいたでしょうが、自分で保育園出身と言う子供は聞いたことがありません。

 幼稚園を出た子はまるで「母校」のように話す子が多かった。



 幼稚園は小学校に上がっていきなりとまどわないように慣れる効果があったかも知れません。

 しかし考えてみれば、小学校は全てにおいて新しいことですからその必要はなかったのです。


 子供たち自身は、その出身による差について特に思うことはありませんでした。

 都会でも家が商売なんかをしていて、どちらにも通わなかった子供もいましたし、あまり小学校以前の育ち方の違いについて子供たちが認識することはなかったと思います。


 子供たちはまだお互いというものをよく理解できず、これから他人のことを理解しようとする時期でしたから。


 幼稚園と保育園という出身の違いについて、影響を考えることもできるかも知れませんが、その後のことを考えればあまりに小さなことに思えます。


 それぞれの出身によって育ち方がどう違ってくるかは、説としてもあまり聞いたことはありません。

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