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ガチャガチャ


 子供が寄り道をする先、そのトップは駄菓子屋さんでした。

 そこにはたいてい「ガチャガチャ」というものがありました。

 昔は10円ぐらいでした。

 暫くすると三枚重ねて30円、そのうち50円ぐらいに。

 100円ぐらいには値上がりしました。それから先のことは駄菓子屋から足が遠のき、よくは知りません。



 これは今でもショッピングモールなんかにあったりします。

 300円とか500円しますから驚きます。

 でもアレは昔とはまるで違うものに思えます。


 ネットでも似たような位置づけだとしてあるようで、「ネットガチャ」なんて呼ばれています。


 でもその本質はクジだ。

 ちょっと違う気がします。



 私らが子供の頃、ガチャガチャというのは決して「クジ」ではありませんでした。

 
 ガチャガチャの機械というのは中身が見えました。

 金を入れて回すとタンブラーに引っかかったカプセルが落ちてきます。

 カプセルも透明で、中に何が入っているかがなんとなくわかりました。

 だから今タンブラーに引っかかっているものが見えましたから、次にカネを入れればどんなものが出てくるかがだいたい分かりました。


 その上、そのガチャガチャの機械は子供が持ち上げることだってできた。


 だから欲しいものがあるとわかると、駄菓子屋の婆さんの目を盗んで、そのガチャガチャの機械をみんなで持ち上げて逆さにする。

 揺らしてシャッフルして、欲しいものがタンブラーに引っかかるようにする。

 そうして一番欲しいものがきたら金を入れて回して取るのです。



 時々は見込み違いだったり、実は見えていたと信じていたのが間違っていたとか、そういう悔しい間違いもありました。

 誰かがそんな風にしくじると大笑いになったりした。


 それにあんまり乱暴にガチャガチャやっていると駄菓子屋で店番をしている婆さんに注意されてしまいます。

 だからコッソりとやった。


 欲しいものを何とかしてもらう。そういうのが面白かったのです。

 だから決して金を注ぎ込めばいいというものでもありませんでした。


 欲しいものは工夫して、最低限の金だけをかけて手に入れようとしたのです。

 小さなカプセルにはスパイセットだの極小のヨーヨーだの、手品のタネ、スーパーカーの消しゴムだの色んなものが入っていました。

 それがどれだけくだらないものでも、取るという労力があったから楽しめたのだと思います。
 

 
 少なくとも、今のように何でもカネ、金さえ出せばいいというものではなかった。


 楽しい気持ちというのは、頑張ったから味わえたものです。


 友達に協力してもらったり、寄り道した駄菓子屋で見つけて苦労して取ったりすることで、コレクションの嬉しさもひとしおだったものです。


 そのうち中身が見えないようになったり、持ち上げられないようにコンクリに接着されたり、ガチャガチャも姿を変えていきました。

 「なんだそんなのつまらない」そうやって遠ざかっていった世代もいました。

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寄り道

子供たちの寄り道の先は日替わりで色々でした。

 駄菓子屋に寄ったり、友達と公園で遊んでから帰ったり。

 その日の気分、その日に一緒に帰る友達の都合によります。



 「一度、家に帰ってランドセルを置いてから出かけなさい。」

 そんな風にいいつけられてはいましたが、帰ってからまた集まるのが不便な子供もいて、そのまま帰り道に遊んだりしました。

 よっぽど仲がよかったりしても塾や習い事がある子供もいたりしましたから、寄り道ぐらいしか学校の外で友達たちと遊ぶというのが難しかったというのもあります。


 その上、子供たちの帰る方向はバラバラです。

 ですから、遠回りしながら帰ることになります。


 子供たちにとっては、帰りの途中で、方向を違えなければちゃんと帰路についていることになるという理屈でした。




 そのうち、学校が放課後の校庭の開放をするようになったのも、そんな寄り道の防止というのがあったかも知れません。

 当時は子供の誘拐事件などもありました。



 最近の子供は寄り道をしないと聞きます。

 色々と不自由な世の中になっていったのでしょうか。



 駄菓子屋などで寄り道をしていると、通りかかった女子から後ろ指をさされたものでした。

 「男子が買い食いなんかしてる」なんて言われたものです。

 コーラを買ったり、駄菓子を食べたり。

 帰り道をそんな風に友達と過ごしたのでした。


 そうやって買い食いしたり、店に寄ってもんじゃ焼きなんかを食べたりして、子供たちは世間の空気に馴染んでいきました。



 女子はあまり寄り道をすることはありませんでした。


 女の子がそれでは困りますから、それでよかったのかも知れません。


 その代わり、女の子たちは帰宅後にそれぞれの家に行ききしてマンガを貸し借りしたり、学校外での交通が男子よりもあったようです。

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