タバコを初めてクチにしたのは小学生の時です。
近所に工事のおっさんが外溝の工事に来ていて、私はそれを見に行きました。
おじさんたちは昼の弁当を食べた後の休憩の時間。
その頃は外食なんてそんなにありませんでしたから、たいていはどんな職人でもお弁当を持ってきていたものです。
車庫入れの市道の芝生のあるところに寝そべっておっさんたちが休憩していました。
外溝の工事はその芝生の家の工事でした。
そこに寝そべっているおっさんたちを横目に、私は工事中のブロック塀の構造や仕組みなんかを見ていました。
すると何を思ったのか、おっさんの一人が「吸うか?」なんて言って、自分が吸っているタバコを吸わせようとした。
私はちょっとクチをつけて吸ってみた。
でも吸い方がわからず、煙は何の味もしなかった。
咳き込むこともなかったから、おっさんは「ふうん」なんて詰まらなさそうにしていました。
また私からタバコを戻すと地面に寝そべって吸っていました。
とてもリラックスして美味しそうに。
そして、「まだ出来たばっかりだから危ねえぞ」なんて、言い訳のように言った。
汗臭いおっさんの臭いがあたりに立ち込めていて、私はそこを立ち去りました。
それからずっと私はタバコには興味もなく吸うことはありませんでした。
私はタバコというものは子供の頃からよく知っていて、駅なんかでも人々が吸っているのをよく見ていましたから不思議なものとは思いませんでした。
もちろんよくタバコを買うお使いにもやらされました。
自動販売機もまだそんなにはありません。
たいていはおばあさんが番をしているタバコ屋に買いに行かされたものです。
中学生の頃、タマリ場にしている駄菓子屋の裏で、タバコを吸い始めた連中がいましたが私は同調するのが嫌で吸わなかった。
ひねくれていた私がタバコを吸うようになったのは、一人で生活し始めた15の頃からです。
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