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視聴覚教室

なんだか懐かしい響きの言葉です。

 そんな特別な設備の教室が学校にはありました。

 普通の教室ではありません。

 授業で使うときはわざわざその部屋に出かけました。

 前の日から伝えられていたのに忘れてしまい、当番から戻ってみるとガランとした教室に驚いたりしたなんて、そんなこともありました。



 視聴覚教室には部屋を暗くするカーテンなんかがあって、イスも机も違うものでした。

 正面の隅に大きなテレビが置いてありました。

 スクリーンもあってプロジェクターみたいなものもあったり、スライドを見せたり。


 短い映画のようなものを見せられたりもしました。

 8ミリみたいなフィルムでした。


 それぞれ、機材をひとつずつ一回ずつぐらい、お約束のように使ってあとはおしまい。

 どれもどんな授業だったかほとんど思い出せません。

 教師も機材の使い方がよくわからなかったのでしょうが、内容はあまりありませんでした。


 せっかく投入された予算だから使わないといけない、ただし何を教えるかは決まっていなかったというわけです。教師によってバラバラでした。
 だから、他のクラスの子供たちとは違うものだったりしました。

 さすがに映写機の時は技術師が来ていた覚えがあります。



 暗くなるとヒソヒソとザワつくのはどこの子供たちも同じ。

 暗闇になったことが面白くてハシャいだり。そうして眠くなってしまったりする子をカラかったり。

 黙っているよう注意され、一方的に短編映画を見させられて終了します。

 準備に手間取り休み時間が潰れてしまったり。




 当時はテレビが全盛の昭和の頃でした。

 そこで映像を授業に使うというアイディアまではよかったのでしょうが、なんの教材として使うかとなると教師たちにはスキルがありません。


 教師たちにはプレゼンテーションの技術がないのですから仕方がありません。

 だから黙って短編教育映画を見せるなんて一番やりやすかったのでしょう。

 水俣病の記録なんかを見せられた覚えがあります。

 

 今なら小学生にはタブレット端末を配っているそうですから、もう視聴覚教室なんて学校にはないのかも知れません。

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初めての眼鏡


 目が悪いと、眼鏡を作ってくる子供がいた。

 小学校低学年は人生で最初に眼鏡をかけ始める時期だ。


 どこかで検査したり健康診断で眼鏡が必要ということになって、メガネを作ってくる。


 そして学校にかけてきた。

 春休みが終わったような休み明け、メガネをかけて学校に来たりした。





 メガネとは縁のない子供たちにはこれがちょっとした驚きだった。

 今までの様子とは違う印象になって、学校に澄ました顔で登校してきたからだ。


 たちまちその子供を囲んでインタビューが始まった。レンズの度数がどうだの、どんな感じに見えるかなどをみんなが尋ねた。

 そしてその輪に入学時からメガネをしていた子らが混じる。

 
 質問攻めにされた子供もまんざらでもない顔をして、答えてくれた。

 その態度が少し年長っぽく見えたものだ。


 どんなメガネをしているにしても、今までと顔が変わる措置をするというのはちょっとした驚きだった。



 我々は社会に長く生きているからもう人の変化などなんでもない。

 しかし友達に起きた突然の変化は衝撃とさえ云ってもよかった。

 
 子供たちはそうして、それぞれ個人に事情があるということを学んだ。

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